沖縄伝統工芸の一つである「壷屋焼(つぼややき)」をご紹介致しましょう。 壷屋(つぼや)とは那覇市の町名で、琉球王朝時代からの陶器の生産地です。周辺の諸地域の影響を受けつつ形成され、14〜16世紀の大交易時代には、中国や東南アジアなどの多くの貿易陶磁器が流入しました。
沖縄の陶器は、きらびやかさや繊細なところはあまり見られませんが、自由闊達、大胆で、どれも生活感あふれたたくましさに満ちていると言えそうです。
壷屋焼の種類は大きく分けて上焼(じょうやき)と荒焼(あらやき)があります。
上焼は皿、急須、湯呑などの小型の日用雑器全般が代表的です。表面に釉薬が施されているため、写真のようにつややかな器であるのが特徴です。
上焼には特異な例として、家型の厨子甕(ずしがめ)のように大型の陶器もあります。
実はこの甕、沖縄の墓で納骨に用いられるものなのです。
荒焼はどことなく素朴で、力強さを感じさせる陶器です。
酒甕、水甕、味噌甕など、比較的大型の陶器に多く、無釉で焼き締めのものとなっています。
「工房の風景1」
壷屋の町には22の工房がひしめきあっています。
メインストリートには専ら販売店のみが立ち並び、工房は細い路地を深く入った、非常に静かな住宅街の中にあるのが通例です。
「工房の風景2」 こちらの工房は上焼専門の工房。
土の香りと、お二人で黙々と作業を進める風景が印象的でした。
陶器ができるまでの、大体の工程をご紹介致しましよう。 (一通りの作業は17工程にも及びます。工程1〜6は、その大きな区切りとご理解下さい。)
上焼に使われる陶土(とうど)は、沖縄本島中部以北から採られ、赤土と白土に分けられます。
赤土は素地土として使われ、白土は素地土に混ぜられたり、器の表面を白くするための化粧掛けに使われます。
「工程2」成形 ロクロの上に素地土を乗せて、器を成形します。
今でこそ電動なのですが、昔は下側にも円盤があり、それを足で蹴って回していたそうです。
「工程5」乾燥 こちらでも扇風機は大活躍です。
あまり急激に乾燥させると亀裂が生じるため、結構気を使うそうです。
「工程6」窯入れ 釉薬を掛けた後、1200度前後で焼成されます。
この窯は登り窯と呼ばれる連房式の窯で、斜面に築かれており、中には幾つかの袋が設けられているのが特徴です。
実のところ、写真の窯は県指定文化財で、現在は使われておりません。
当時は薪で1週間ほど燃焼させたそうですが、現在はガス窯で3日ほどだそうです。